「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」は警視庁公安部に配属されている天才であり変人でもある当麻紗綾が主人公で、
SITの小隊長である瀬文焚流が任務中に不可解な現象を目撃したことで、物語は始まります。
現代の科学では説明がつかないような不可解な事件を中心に捜査を行なう部署である通称「未詳」に配属されることになった瀬文は当麻とともに「SPEC」と呼ばれる特殊能力を持った犯罪者たちと対峙していくことになります。
このドラマは堤幸彦監督の世界観が色濃く出ている独特な空気の作品で、とくに登場するキャラクターが全員魅力的であることが特徴として挙げられると思います。
戸田恵梨香演じる主人公・当麻紗綾には特徴的な台詞や印象的なシーンも多く、
強烈なインパクトを持ったキャラを体当たりで演じており、戸田恵梨香でなければ成立しないまさに当たり役といっても過言ではありません。
相棒となる瀬文焚流は当麻とは対照的にSPECなどという超能力を端から信じていない現実主義者で朴とつとしながら当麻に振り回されていく警察官を加瀬亮が演じています。
この2人がSPECの世界観を魅力的なものにしており、これは練られた脚本だけで出せるものではなく、キャスティングの妙によって奏功したドラマともいえます。
また宿敵となるニノマエや未来が見える冷泉俊明、心が読めるサトリなど登場する超能力者たちにも癖のあるキャラが多く、
まだ新人女優だった有村架純をワンポイントで起用するセンスや一言の台詞でインパクトを残す演出など、見れば見るほど新しい魅力に気づける作品です。
またテーマ曲である「NAMI no YUKUSAKI」もドラマに完全にマッチしており、どこからこんな曲を見つけてくるのかと感心してしまいました。
基本的には1話完結のスタイルをとっているため完結した物語として見やすく構成されており、さらに伏線や謎を多く残していくことでドラマ全体の縦軸も最終話に向けてしっかりと用意されています。
当麻、瀬文の過去をひも解くことで登場人物たちの葛藤や弱い部分なども描かれ、ドラマとして必要な要素がすべてそろっている作品です。
「SPEC」は演出が独特で小ネタも多く、トリッキーなドラマとして見られがちですが、ドラマとしての完成度は決して低いものではなく、放送が終了したあとも定期的に見たくなることからも、唯一無二の空気感を携えた稀有なドラマであることを実感します。
評価点 8.5点