ここでお勧めするのは「バジリスク」2005年公開の方です。
今は続編のバジリスク~桜花忍法帖~がテレビでやっていたばかりだし、Huluでもおっかけで扱っているのでこちらの方が目立つのですが、Huluにはそれ以前から2005年版のバジリスクを現在もピックアップしてくれています。
ストーリーは徳川家康がブレーンである天海僧正の入れ知恵で3代将軍の跡目を伊賀対甲賀の忍法勝負で決めようと無茶を言い出します。
元々犬猿の仲であった両者はむしろ喜んで殺し合いに身を投じていきますが、それぞれの頭目である甲賀弦之介と伊賀朧はすでに愛しあっていました。
一緒になっていがみ合う二つの流派を結び付けようと話しあっていた矢先だったのです。
伊賀と甲賀の忍びたちはそれぞれ10人ずつの手練れを選び、化け物じみた忍びの技で殺し合います。
仲間の死を目の前にする内に、弦之介と朧も、ただ悲嘆に暮れ、葛藤し、そしてそれぞれの覚悟を決めます。元の原作は山田風太郎の「甲賀忍法帖」です。
この人の作品は突拍子もない忍術と女忍者のお色気。
はっきり言ってしまえばかなりのエロもありますが、時代小説の書き手として卓越した知識を持っている先生で、自分としては難しいネタを面白く料理する名手だと思っています。
作画のせがわまさきも「Y十M~柳生忍法帖~」から最近は「十~忍法魔界天生~」といった流れで、風太郎作品をコミックス、アニメにするならもうこの人しか考えられなくなりました。
やばい風貌の忍者から可愛い女忍者まで魅力的タッチで描き分けています。
さて、このタッグ、冒頭でも触れたように、今は桜花忍法帖の方が情報としてはホッカホカなのですが、あえて一作目をお勧めするのはやはり原作の妙といいますか。
いや、決して桜花をけなすつもりはないのですが、比べるとやはり風太郎オリジナルの方が、全体を通してバランスがとれているというか、全24話にテンポよく収まっているというか。
実際、山田風太郎の作品とした場合、超人のような忍法が炸裂するのも、お色気たっぷりの女忍者が活躍するのもセオリーなのですが、その中で、主役忍者の愛憎が作品のベースとして貫かれていることは珍しいのです。
全般通して、迫力のアクション、はっきり言えば壮絶な殺し合いの物語。
それなのにあの最終話、あのラストシーンの余韻は上質の恋愛小説を読んだ後と同じものなのです。
ちなみに、アニメではないのでほんとに蛇足になりますが、実写版もこのHuluにはあります。
「SHINOBI」朧役を仲間由紀恵さんが演じています。こちらは、仲間由紀恵さんはいいんだけど、登場人物がかなり端折られています。
もちろん、尺の都合だからしょうがありませんが、ちょっと消化不良に。
その点でもアニメ「バジリスク~甲賀忍法帖~」いい形にまとまっていますのでお勧めですよ。
私の中では9.5ポイント(10段階)の作品です。