新宿駅の伝言板に、XYZの3文字を書いておくと、必ず助けてくれる都会のスィーパー・シティーハンター。
彼は、決して一般常識的な正義感で動いている訳ではないのです。
彼は、彼なりの正義感で動いているのです。私が初めて触れた「大人の世界」でした。
それまでの主人公は中高生が多かったので、内容もスポーツものや学園ものが多かったのですが、この作品で初めて「大人の男性」が主人公の作品に出会いました。
まずOPからかなり大人の雰囲気が漂っていて、曲調もテレビアニメの主題歌とは思えないぐらいレベルが高かったんです。そして、主人公であるシティーハンター冴羽撩のかっこよさに惚れ惚れとしました。
冴羽さんは、普段は本当にいい加減な人です。美人と見ればすぐに声をかけ、どんな事をしてでも口説こうとするんです。でも、ふとした瞬間に見せる優しさや寂しさといった表情に、大人の男性の本当の意味での強さと優しさが見えたような気がしました。
この作品の魅力は、大人の男女の素直になれない恋心です。冴羽さんのパートナーである槇村香は、冴羽さんの亡くなったパートナーの妹です。
冴羽さんと槇村さんは親友でした。その親友の忘れ形見である香さんに、冴羽さんは自分の気持ちを告げられないままでした。
それは、亡くなった親友の為だったかもしれませんし、香さんを危険な目に合わせたくなかったのかもしれません。その本心は分かりませんでしたが、冴羽さんがどれほど香さんを大切にしているのか、よく分かりました。
大人って、どうしてこんなに不器用なんだろうと思いながら見ていました。この作品の魅力は、コメディとシリアスのバランスです。
人は、コメディばかりでは笑いに飽きるし、シリアスばかりでは疲れます。
この作品のように、コメディのシーンがあるからシリアスの場面が目立ちますし、シリアスのシーンがあるから、コメディ部分が目立つのです。そして、いつもふざけてばかりいる冴羽さんが時おり怒りの表情を見せるから、心に響くのだと思いました。
シティーハンターには、憧れていた大人の世界の全てが詰め込まれていたような気がします。ラブコメなどで見る、歯の浮くような台詞を吐くようなイケメンとは違う、言葉では言い表さなくても、その態度で愛情を示してくれる。
そんな大人の世界がありました。
この作品のせいか、私は軽々しく壁ドンをするような男性キャラが苦手になってしまいました。
男は背中で語るものです。評価は9.5です。