「アカギ」と並んで福本伸行氏の代表作とも言える「カイジ」シリーズ。従来のギャンブル漫画とは一線を画する、主人公であるカイジがかなりのダメ人間でありながら、
いざという時には覚醒し勝負に勝ち抜いていくハラハラ感と、定番ゲームである麻雀とはまた違った新鮮味のある種目の数々が大ヒットした作品とも言えますが、
本作はそんな「カイジ」で、敵役ながらも主人公以上のインパクトを残していった利根川が主人公のスピンオフとなっています。
サラ金的な金融業を営み、闇金業者ともつながりがある「帝愛」グループの会長である兵藤の最側近にして、ナンバー2の座を得るまでになった利根川ですが、それはつまり強烈にワンマンな兵藤氏に付き従い、
頼りない部下に背中を見せ、時には陣頭に立ち仕事をこなしていかなければならない、ということでもあります。
元々帝愛は強烈な取り立てを得意とするブラック色の強い企業ですからコワモテが多く、反面ソフトな対応には弱みがあり、まとめ役の利根川が実に苦労するんですね。
本作は、原作である「カイジ」を強く意識させつつも、あくまで本筋は「帝愛」サイドという雰囲気で動いています。
あの悪辣な限定ジャンケンに行き着くまでの間にも、企画を出す以前に自己紹介で部下をきちんと把握していなければならなかったりと、
とにかく利根川には苦労が絶えませんし、ワンマンな兵藤にも未熟な部下たちにも、その大変さが分かって貰えないのです。
超巨大グループのナンバー2にまで上り詰めながら、常に中間管理職的な立ちいぶるまいを続けなければならない利根川、常に自分を高めるための準備を怠らない利根川の姿はまさしくビジネスマンのかがみというやつですが、
頑張って働く利根川たちに感情移入しすぎると、エスポワールなどの局面でゴネることが多い若者たちへの視線が厳しくなってしまい、原作の印象も変わりそうな雰囲気がありました。
実際利根川は厳しいながらもリーダーシップと温かみのバランスが取れていて、「カイジ」で見るよりもずっと理想の上司に近く、成果を上げていきたいなら彼とった感じすらあります。
作画などに関しても極めて安定しており、一方で、ナレーションに川平氏を起用するなどして、原作カイジやアカギとは違う雰囲気を示していくなどの小ワザもかなり利いていて、視聴していて楽しい一作だと言えます。
ただ、先にも述べましたが帝愛は典型的なブラック企業であり、今時彼らの真似をして得することも少ないかな、とも思いました。