「めぞん一刻」とは、高橋留美子先生原作の恋愛漫画作品です。今で言うラブコメのはしりとも言える恋愛劇ですが、今までの多くの少年漫画作品と異なるのは、「大人の恋」がしっとりと描かれていることです。
「一刻館」の若く魅力的な管理人である響子さんは実は未亡人であり、そのお相手も元は自分の教師だった音無先生だったりと、「子供向け」ではない背景を持つ彼女に、
主人公の五代君がアタックしていくという構図ですが、非常識で面白いアパートの住人や他の女の子からの横ヤリなどもあって、なかなか恋愛成就に至らないというのが本作の肝と言えます。
そしてこのアニメ版は、単に漫画をアニメ化したというだけでなく、「うる星やつら」でも垣間見られたアニメ版におけるいくつかの変更によって、響子さんがより柔らかで大人しい、
成熟した女性といった側面を強く出していたりと、より「トレンディ・ドラマ」を意識したようなつくりになっている他、主題歌に用いられた曲たちも良い意味でアダルトです。
アニメ版に際してその良さを全面に活かしきる作りは、その後の「らんま1/2」で花開き、漫画の良さを活かしつつも独立した名作として成立させる要因となりましたが、
「めぞん一刻」はその源流であると同時に、実写系の作品にも寄せていき、アニメというジャンルをより広くに認知させる効果をもたらしたと言えるのではないでしょうか。
元気だが人が良く押しの弱い五代君と、とてもおしとやかで上品な響子さんという組み合わせですので、今時の作品と比べると物語がなかなか前に進まないのは事実ですが、そうしたもどかしさも面白く、懐かしい雰囲気で味わうことができるでしょう。
実際響子さんも、大人しくにこやかな女性なのはもちろんですが、決してそれだけではなく、よく見ると抜群のスタイルを持っていたり、かなりのヤキモチ焼きで感情のコントロールがしにくくなる一面を持っていたり、パチンコや大工仕事で意外なほどの実力を発揮したりと、非常に幅が広く懐が深い人物でもあります。
だからこそ、「操」を立てている響子さんには健気さを感じますし、不器用な五代くんの動きにも、共感できる要素が多いと感じ取ることができるのでしょう。ライバルの面々も決してイヤミではなく、全体に爽やかな展開があるのも嬉しいですね。
地に足に着いた舞台設定ながらも夢がいっぱいのドタバタ劇と、責任があるが故のもどかしさを味わえる名作であり、今観ても古臭さは一切感じることがありません。